前回、法律で決められている相続人とその相続分についてご説明しました。
この法律で決められている「相続人」や「相続分」を、相続が発生する前に、つまり、生前に、財産の所有者が自ら、変更・指定するには、「遺言書」を作っておく必要があります。
ただし、遺言書は、その形式・書き方が厳格に決まっていて、一つでも間違うと、その遺言書は無効になってしまいます。
遺言書には、その形式によって、いくつか種類がありますが、ここでは、一般的な2種類の遺言書の書き方について、ご説明します。
①自筆証書遺言
内容・日付・氏名を、すべて自分で書いた上で、印鑑を捺印します。日付、氏名、印鑑、どれか一つでも抜けていれば無効ですし、自筆である必要があるため、ワープロやパソコンで作成したものは無効です。内容も、曖昧な書き方をしてしまうと無効になる可能性があります。
このように、自分で書いて保管しておくだけですので、簡単ですが、法律によって決められた書き方を守っていないと、遺言書自体が無効なものとなってしまいます。
また、遺言書というのは、遺言書を書いた本人が生きている間は、その保管場所を知られたくないものですが、亡くなった際には、相続人に見つけてもらう必要がありますので、その保管場所に困ることが多いようです。
なお、相続人は、相続開始後に、家庭裁判所で、遺言書の「検認」という遺言書の確認の手続きが必要となります。
②公正証書遺言
公証役場で、公証人という法務大臣に任命された公務員に作成してもらう遺言書です。
公証人と打合せの上、その内容を公証人が作成してくれますので、自筆証書遺言のように、遺言書自体に不備があるということはありません。また、遺言書の保管については、原本は公証人が保管し、遺言書を作成した本人には、遺言書の謄本が発行されます。
この公正証書遺言を作るには、証人が2名必要となり、その証人2名と一緒に公証役場へ行く必要があります。なお、相続人となる予定の方は、証人になることはできません。
また、公正証書遺言作成の手数料を、公証人に支払わなければなりません(この手数料は、遺言書に記載する財産の金額によって変わります。)。
なお、公正証書遺言の場合、自筆証書遺言で説明しました「検認」の手続きは、必要ありません。
このように、
「自筆証書遺言」は、作成するのが簡単ですが、内容に不備があると無効になってしまいます。
「公正証書遺言」は、公証人が作成するので不備はありませんが、その分、手間と費用がかかります。
両方の遺言書にメリットとデメリットがありますが、遺言書を作ろうと思ったら、まずは、すぐに自筆証書遺言の形式で遺言書を書いてしまいましょう。
どんな人も、明日、自分に何が起こるかはわかりませんので。