前回は、遺言書の書き方についてご説明しました。
今回は、遺言書を書いた後で、それを取り消す方法について、ご説明します。
前回、自筆証書遺言と公正証書遺言という2種類の遺言書の書き方について、ご説明致しました。
遺言書を単純に取り消す場合、自筆証書遺言であれば、単に破棄すれば良いだけですので、簡単ですが、公正証書遺言の場合、原本を公証役場にて保管してもらっているので、簡単には破棄することができません。
ではどうするか?
遺言書は、最新のものが優先されます。
つまり、何度か遺言書を書いていた場合、最後に書いたものが優先されるのです。
そのため、「日付」が重要になります。
このルールは、どの種類の遺言書にも共通です。
ただし、新しい遺言書を作ったからといって、
前回の遺言書がすべて無効となるわけではなく、
以前に作った遺言書と新しい遺言書で、内容が矛盾しない点については、
以前に作った遺言書も有効です。
例えば、次のような2つの遺言書を作成したとします。
《遺言書Ⅰ》
【内 容】
①すべての預貯金をBに相続させる。
②すべての不動産をAに相続させる。
【日 付】
平成27年1月28日
【作成者】
大阪府吹田市垂水町2丁目3番26-302号
甲田 乙太郎 印
《遺言書Ⅱ》
遺言書
【内 容】
①すべての預貯金をCに相続させる。
【日 付】
平成28年2月29日
【作成者】
大阪府吹田市垂水町2丁目3番26-302号
甲田 乙太郎 印
この場合、
①の預貯金の部分については、
後に書かれた平成28年2月29日付の遺言書が有効となり、平成28年1月28日付の遺言書は取り消されたことになります。
ただ、
②の不動産の相続に関しては、
新しい平成28年2月29日付の遺言書には何も書かれていないので、この不動産の部分については矛盾がないため、古い方の平成27年1月28日付の遺言書が今でも有効です。
このように、
最後に書いた遺言書、つまり最も新しい遺言書の内容が優先され、
新旧の遺言書で矛盾のない部分については、古い方の遺言書も有効となります。
この理論は、遺言書に書かれた財産について、遺言書の作成者自らが処分をした場合も同様です。
上記の2つ遺言書がある場合に、甲田乙太郎さんが、遺言書の効力発生前、つまり、生前に、すべての不動産をDさんに売ってしまった場合には、平成28年1月28日付の遺言書の②の不動産に関する部分も取り消されたことになり、Dさんへの不動産の売却が有効となるのです。
前回も同じようなことを申し上げましたが、
一度、遺言書を書いた後に、もし、気が変わったときにはすぐに行動に移しましょう。